今回は、算数が苦手な親御さん向けに「誰も教えてくれない場合の数がわかる2つのポイント」を説明したいと思います。
「場合の数がわからない」と子どもに質問されたときに、親として押さえておきたいポイントがあります。
「算数が苦手な親御さん向け」ですので、わかりやすく解説します。
「場合の数」は抽象的で理解しにくいです。子供に質問されても答えるのが難しかしい分野です。
「場合の数」に必要な2つのポイントがわかればウソのように解けるようになるので是非ご一読ください。
「場合の数」とは、
1、2、3、4、5の5つの数字から三つ選んで3桁の数字を作るとき、何通りありますか?
というような問題です。
「何通りありますか?」
で問われる問題です。
このような問題が難しい点は、
✅ 力技で書き出すしか解答法が思いつかない
✅ 答えが出たとしても漏れや重複がある可能性
などが挙げられます。
最初は力技で書き出すことでもよいのですが、テストともなると時間制限があるので書き出しているだけで終わってしまいます。
できればすべてを書き出さずにスマートに解きたいと思っているがなかなかできません。
また、この問題は解けたけど、似たようなあの問題はなぜか解けないという事態にも陥ります。
つまり、
✅ 本質がわかっていないので正解を得るための再現性が低い
ということになってしまいます。
「再現性が低い」は天才でない限り誰もが壁にぶち当たります。私も「場合の数」の2つのポイントを理解するまで得点が安定しませんでした。
「場合の数」は、難関校ではよく出題されるだけでなく、大学受験でも難関大学でよく出題されます。
苦手意識があるまま中学受験を終えると、中学、高校になってもなかなか苦手意識から抜け出せずにずっと不得意分野にもなりえます。
しかし、子どもから「この問題がわからない」と言われても親が理解していないと解答を読むだけでは子どももなかなか理解できません。
また、親が教えようと解答を必死になって教えても、その問題はわかったつもりになっても、似たような問題が新たに出題されるとできないということがよくあります。
それは、
大事なポイントを押さえられてない
ことに起因します。
では、大事な2つのポイントとは何でしょうか?
早速、結論から言ってしまいます。
✅ 対象が区別できるのか区別できないのか
✅ 選ぶだけなのか、並べる必要があるのか
これだけです。これだけ理解するとスッと問題が解けるようになってきます。
初めて子どもに場合の数を教えたときに、まずこの2つのポイントを意識するようにさせました。
その結果、すっと理解できたようで問題を解けるようになり、場合の数に苦手意識はないようです。
算数が嫌いな人からしたら、「何言ってるねん!?」って言われそうですが、安心してください。
いまから例題を使いながらわかりやすく説明します。
対象が区別できるのかできないのか
具体的に例示しながら説明していきます。
例1:対象が区別できない問題
リンゴ3個、みかん2個から3個選んでもらえます。もらい方は何通りありますか?
これは、「対象が区別できない」問題になります。
つまり、リンゴ3個はそれぞれリンゴA、リンゴB、リンゴCというように区別できません。
同様に、みかん2個もそれぞれみかんA、みかんBというように区別はできません。
リンゴもみかんもそれぞれ『同じ』と考えます。
リンゴにはジョナゴールド、陸奥など種類があるから違うというような屁理屈はなしです。
当たり前すぎますが、区別できるかできないかで考え方が大きく変わってしまうのです。
「対象が区別できない」ものなので、3個のリンゴからどのリンゴを選ぼうが同じです。また、2個のみかんからどのみかんを選んでも同じです。
ですから、3個選ぶ方法は、
(リンゴ、リンゴ、リンゴ)(リンゴ、リンゴ、みかん)(リンゴ、みかん、みかん)(みかん、みかん、みかん)
の4通りになります。
例2:対象が区別できる問題
男の子3人、女の子2人がいます。その中から3人選ぶとき何通りありますか?
これは、対象が「区別できる」問題になります。
男の子、女の子はそれぞれ区別できます。
リンゴやみかんのように、まったく同じではないからです。
つまり、男の子は男A、男B、男Cというように区別しないといけません。
また、女の子も女D、女Eというように区別する必要があります。
その前提で考えるとわかりやすくなります。
男の子3人と女の子2人の合計5人から自由に3人を選ぶだけの問題ですから、
A、B、C、D、Eの5つから3つを選ぶ
という問題と同じです。
書き出すと
(ABC)、(ABD)、(ABE)、(ACD)、(ACE)、(ADE)、(BCD)、(BCE)、(BDE)、(CDE)の10通り
となります。
コンビネーショ(組み合わせ)を使うと5C3と簡単に計算できるのですが、別で解説したいと思います。
区別できるかできないかで考え方が大きく変わります。
大事なポイントなので必ず意識するようにしましょう。
区別できないものの代表的なものに、果物などの『もの』以外にも
✅ 色
✅ 数字
✅ カード
があります。
例3:対象が「区別できない」と指定される問題
また、問題によっては「区別のつかない〇〇」というように指定してくることがあります。
例えば、
同じ大きさの区別のつかないサイコロが3つあります。それらを同時に投げる時、出る目は何通りありますか?
というような問題です。
「区別がつかない」がポイントです。
これは、サイコロの形や大きさが全くおなじで区別がつかないということです。
すなわち、サイコロA、サイコロB、サイコロCというような区別はできません。
ですから、単純に出る目だけに注目することが必要です。
つまり、サイコロは1~6の6つの数字がありますから、その6つの数字から3つ選ぶ(重複可)という問題に言い換えられます。
書き出すと、
(1,1,1)(1,1,2)(1,1,3)(1,1,4)(1,1,5)(1,1,6)
(1,2,2)(1,2,3)(1,2,4)(1,2,5)(1,2,6)
(1,3,3)(1,3,4)(1,3,5)(1,3,6)
(1,4,4)(1,4,5)(1,4,6)
(1,5,5)(1,5,6)
(1,6,6)
→21通り
(2,2,2)(2,2,3)(2,2,4)(2,2,5)(2,2,6)
(2,3,3)(2,3,4)(2,3,5)(2,3,6)
(2,4,4)(2,4,5)(2,4,6)
(2,5,5)(2,5,6)
(2,6,6)
→15通り
(3,3,3)(3,3,4)(3,3,5)(3,3,6)
(3,4,4)(3,4,5)(3,4,6)
(3,5,5)(3,5,6)
(3,6,6)
→10通り
(4,4,4)(4,4,5)(4,4,6)
(4,5,5)(4,5,6)
(4,6,6)
→6通り
(5,5,5)(5,5,6)
(5,6,6)
→3通り
(6,6,6)
→1通り
の合計56通りとなります。
3つの数字は選んで区別はしないので、(1,2,3)も(1,3,2)も(2,1,3)も(2,3,1)も(3,1,2)も(3,2,1)も同じものと判断します。
選ぶだけなので順番は関係ないのです。
また、すべてを書き出す方法は、上のように、「漏れないよう、重複ないよう」きれいに書き出していきましょう。
3つの場合を考えましょう。
①選ぶ数字が全部違うとき→(1,2,3)のようなときです。
6個の数字から重複なしで3個を選ぶので、20通りとなります。
書きだすと、
(1,2,3)(1,2,4)(1,2,5)(1,2,6)
(1,3,4)(1,3,5)(1,3,6)
(1,4,5)(1,4,6)
(1,5,6)
(2,3,4)(2,3,5)(2,3,6)
(2,4,5)(2,4,6)
(2,5,6)
(3,4,5)(3,4,6)
(3,5,6)
(4,5,6)
の20通りとなります。
コンビネーションを使うと6C3=6×5×4/3×2×1=20通りとなります。
②同じ数字が2つ、それとは別の数字が1つのとき→(1,1,2)という場合です。
書き出すと、
(1,1,2)(1,1,3)(1,1,4)(1,1,5)(1,1,6)
(2,2,1)(2,2,3)(2,2,4)(2,2,5)(2,2,6)
(3,3,1)(3,3,2)(3,3,4)(3,3,5)(3,3,6)
(4,4,1)(4,4,2)(4,4,3)(4,4,5)(4,4,6)
(5,5,1)(5,5,2)(5,5,3)(5,5,4)(5,5,6)
(6,6,1)(6,6,2)(6,6,3)(6,6,4)(6,6,5)
となり、30通りになります。
計算でやると、同じ数字となるものは1~6の6通りあり、残り1つの数字の選びかたは重複する数字以外なので5通りとなりますから、6×5=30通りとなります。
コンビネーションや掛け算で算出する方法は別記事で説明します。
③全部同じ数字の場合→(1,1,1)のようなときです。
書き出すと
(1,1,1)(2,2,2)(3,3,3)(4,4,4)(5,5,5)(6,6,6)
の6通りとなります。
よって①+②+③をすると、最初の解き方と同じ56通りになります。
いきなり書き出すよりは、重複や漏れが少なくなると思います。
例4:対象が「区別できる」と指定される問題
それでは、区別がつくサイコロを考えてみましょう。
大きさが大、中、小のサイコロが3つあります。それらを同時に投げる時、出る目は何通りありますか?
という問題はどうでしょうか?
ポイントは、大、中、小とサイコロが区別できる点です。
大きさが違うので人と同じように区別ができます。
区別できないサイコロでは、
6つの数字から3つ選ぶ(重複可)
という問題に言い換えられました。
しかし、区別できるサイコロでは、(大、中、小)の目の出方がそれぞれ独立しています。
つまり、
区別できない場合は、(1,2,3)も(1,3,2)も(2,1,3)も(2,3,1)も(3,1,2)も(3,2,1)も同じものと判断するので1通りとなりますが、
区別できる場合は、(1,2,3)と(3,2,1)は異なるものとカウントします。
ですから、
・大の目の出方は6通り
・中の目の出方も6通り
・小の目の出方も6通り
あり、出た目は同じ数字でも区別できるものと判断できるので、目の出方は6×6×6=216通りになります。
*書き出すと大変ですので、計算でだしました。
書き出すのならば、表がいいかもしれません。
大 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | … |
中 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | … |
小 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | … |
書き出す場合でも、大が1の場合は、中と小は36通りあるので、大が2のときも同様に36通り、大が3,4,5,6の時も36通りあるので36×6と子どもに説明しても理解してくれると思います。
上記のように、まずは区別できるのか、区別できないのかを意識して問題を解く前に明確にしてから解き始めましょう。
対象が区別できるのか、区別できないのか明確にすることがポイント
これを意識するだけでも、もやもやした感じがすっきりしますし、子どもも理解してくれやすいです。
選ぶだけなのか、並べる必要があるのか
もうおなか一杯な方ももう少しお付き合いください。
あとちょっとです。
さっそく例題から見ていきましょう。
例題5:並べる問題
1、2、3、4、5が書かれた5枚のカードがあります。この5枚から3枚を選んで3桁の数字を作る方法は何通りですか?
よくある問題です。
ポイントは、
3枚選んでから3桁の数字を作る
というところです。
「3桁の数字を作る」
すなわち、
「3つの数字を選んで並べる」
というのがポイントです。
「選ぶだけ」なのか「選んで並べるのか」それがポイントだ!
選ぶだけならば、1と2と3というカードを選んだ時、
選ぶ順番は全く関係ないので、(1,2,3)も(1,3,2)も(2,1,3)も(2,3,1)も(3,1,2)も(3,2,1)も同じで1通りと判断します。
しかし、選んで並べる場合、
123、132、213、231、312、321
の6通りの3桁の数字ができることになるのです。
「選ぶだけ」と「並べる」では、考え方が全然違う
3つの数字の選び方は、全部で
(1,2,3)(1,2,4)(1,2,5)(1,3,4)(1,3,5)(1,4,5)
(2,3,4)(2,3,5)(2,4,5)
(3,4,5)
の10通りあり、それぞれ並べ方は6通りあるので10×6=60通りとなります。
書き出す方法は大変なので、以下のように考えたら楽です。
100の位の数字は、1~5の5通り
10の位の数字は、「100の位の数字」を除いた4つの数字から1つ選ぶので4通り
1の位の数字は、「100の位と10の位で使った数字」を除いた3つの数字から1つ選ぶので3通り
以上より、5×4×3=60通りとなります。
例題6:選ぶだけの問題
1、2、3、4、5が書かれた5枚のカードがあります。この5枚から3枚を選ぶ方法は何通りありますか?
ただ選ぶだけです。
ですから、選ぶ順番は関係ないので、
(1,2,3)も(1,3,2)も(2,1,3)も(2,3,1)も(3,1,2)も(3,2,1)も同じで1通りと判断します。
ですから、
3つの数字の選び方は、全部で
(1,2,3)(1,2,4)(1,2,5)(1,3,4)(1,3,5)(1,4,5)
(2,3,4)(2,3,5)(2,4,5)
(3,4,5)
の10通りとなります。
コンビネーション(組み合わせ)を使うとより楽になります。
5C3=5×4/2×1=10通り
ということになります。*コンビネーションは別記事で説明します。
コンビネーション(組み合わせ)とかわけわからないこと言っているとお叱りを受けそうですが、中学受験生は使いこなしているんです。
浜学園の最高レベル特訓という講座などでは、頻繁にコンビネーションを使って問題を解いています。
長男もコンビネーションを多用して問題を解いています。
より上位層に食い込むためにはコンビネーション(C)は必要な技術になります。
とにかく大事なことは、
選ぶだけなのか、選んで並べるのかしっかり把握すること
です。
やみくもに問題を解いても、ある時は正解するかもしれませんが、ある時は不正解となります。
まさに「再現性」がなく、成績は安定しません。
上記のポイントをしっかり押さえて、問題に取り組むようにしましょう。
まとめ
場合の数が苦手なお子さんに質問されたときにどのように教えるべきか、大事なポイント2つを解説しました。
✅ 対象が区別できるのか区別できないのか
✅ 選ぶだけなのか、並べる必要があるのか
本当にこれだけでだいぶ理解が変わります。
長男にも次男にもまずはこの考えを教えました。
すると、まずは問題ごとにどのパターンなのか認識してから解き始めるようになり成績も安定してきました。
灘中学や最難関校だとこうも単純ではありませんが、この考えが前提で必要となってきます。
できる子は無意識にこれらを理解していると思いますが、理解できていないお子さんや初めて接する場合の理解のきっかけとして役立つと思います。
中学受験は、独特で、方程式が使いにくいために、比を多用したり、つるかめ算、旅人算など特殊な解法がたくさんあるように見えますが、そのポイントを抑えられれば本質的に理解がすすみ再現性をもって得点できるようになります。
いかにポイントを上手に教えて、再現性を高くしていくかが大事になってきます。
はじめはよくわからない解き方でも、ポイントを押さえさせ、解ける喜びを感じ、再現性をもって得点できるようになるとぐいぐい伸びてきます。
そのためにも親がいかに理解しているかも重要ですね。
次回は、少しずつ応用問題を解いていってみましょう。
積み重ねで最難関レベルも解けるようになってきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでも参考にしていただければ幸いです。
算数の成績を上げる方法については、他の記事も参考にしてください。
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