今回は、「不登校になってしまう原因」について説明します。

私は精神科医ををしているので、不登校で困っている親子も診察しています。
ときどき、母親もしくは父親に連れられて不登校のお子さんが受診されます。
「不登校になってしまったけど、どうしたらよいですか?」
という主訴です。
現実的にいうと、病院を受診するころにはかなり難しくなっています。
大部分のケースが、病院を受診するまでに、すでに「数か月~1年」ちかく不登校になってしまっています。



時間が経てば経つほど、リカバリーに時間がかかります。
病院、とりわけ精神科にまでたどり着くまでには、時間がかかってしまうのは仕方ないです。
家庭、学校で何とかしようとしている間に、時間がかかってしまい解決の糸口が見いだせず病院受診に至ります。
今回は、よくあるケースを取り上げながら、解説していきます。



今は大丈夫なご家庭も何かをきっかけに「不登校」になってしまう可能性はありますから、予防としても参考してください。
不登校のケース紹介



お母さんに連れられて、中学1年生の男の子が来院されました。
はじめは、お母さんがここまで至った経緯を話されます。お子さんは黙って座っています。
✅ 13歳男児 中学1年生
✅ 小学校は少し休みがちながらも通学していた
✅ 勉強は好きではないが成績は悪くないとのこと(?)
✅ 体育は苦手
中学校1年生が始まって、最初の中間テストまではまずまず通学できていたようです。



時折、保健室に行くものの中学校始まってすぐはなんとか行けていたようです。
しかし、少しこのあたりから変わってきます。
「クラスの中心的な生徒から睨まれる」
「みんなから悪口を言われている気がして学校行きたくなくなった」
と、お母さんが説明されます。
お子さんからも、
「友達とうまくいかなくなってきた」
「何にもしてないのに睨まれる」
という発言が聞かれます。



実際、いじめがあったのかどうか伺うと、どうもそうではないようです。
ただ、「睨まれるような気がした」「悪口いわれているような気がした」といって、かなり主観的な印象から生じた発言でした。
お子さんだけから話を伺う
友達関係から「不登校」になっているとは思えませんでしたので、お子さんだけになってお話を伺うことにしました。



まずは、お二人からお話を伺って大まかな経緯を把握して、次に、お子さん、親御さんと別々に面談します。
よくよく話を伺ってみると、
「勉強についていけなくなった」
と、告白してくれました。
もともと小学校のころから勉強は好きではなかったとのことでしたが、成績は中くらいであったとのことでした。
しかし、すべての教科が「中くらい」というわけではなく、一部の教科が中くらいでも、ほかの科目は「できていない」ということがわかってきました。



いまの小学校の通知表では、「1~5」の段階評価をされていることは少なく、「よくできているところは〇をされる」という評価になっています。
ですから、「理解していない」ということが、親から見てわかりにくくなっているのです。
親御さんからしたら、「1~5」段階評価で「1」とか「2」とか評価されているわけではないので、「中くらい」であったという印象でいるんだと思います。
よくない点数のテストは捨てていた。
ということで、親御さんは「成績がよくない」というのがわからずに中学に進級してしまいました。
中学になると、「中間テスト」「期末テスト」があり、通知表も段階評価されるので、周囲との差がもろに現実となります。



親御さんの前では、勉強についていけないとはきっぱりとは言えず、友達とうまくいっていないという理由をつけて不登校になっていたようです。
お子さんにとっては、小学校では何とかごまかせていた成績も、中学校にもなると成績が明確になるのでつらかったようです。
両親には、「友達とうまくいっていない」と説明することで不登校を容認してもらいやすいと思っていたようです。
「勉強がついていけないから学校に行きたくない」とは、誰しも親には言えません。
このままではだめだと思いながら、ゲームに逃げてしまっていたようです。



結局、勉強がついていけてなくなり、教室にいくことができなくなったということがわかりました。
母親と面談
つぎに、お母さんと面談します。



先ほど伺ったお子さんのお話をもとに、お母さんとお話しします。
お話しすると、うすうすは感じていたようですが、どこかで「勉強についていけないから不登校になった」というのを否定したかったとのことです。
もうすでに学校に行かなくなって数か月が経過し、その間、ほぼ全く勉強はせずにゲームしかしていなかったとのことでした。



ここまで行ってしまうと、授業を受けても全く言葉が通じない異国の地にいるような感覚となってしまっています。
現状のまま、「学校に行きなさい」というのは拷問でしかないため、勉強を始めるきっかけ、続けていける環境を優先することにしました。
学校は個別で対応してくれるシステムがないので、「個別指導の学習塾」に通うようにすることで方針が決まりました。
原因が判明した後にどうなったか?
原因が「勉強についていけない」ということがはっきりしましたが、それでまだスタートラインです。



個別指導の学習塾に通う方針となりましたが、はじめの一歩は大変です。
まず、お子さんが行きたがりません。
体験入学で1回は行けたようですが、その後が続きません。
そのように、2週間後の私の外来で相談されました。
確かに、週1~2回と毎日あるわけではないけれども継続して通うとなるには、かなりの精神力が必要です。



ただ、私としては、「体験学習に行った」ということを高く評価しました。
「体験学習に行った」という行動は高く評価すべきです。
「実際に通うかどうか悩んでいる」
と、おっしゃっていましたが、これはチャンスなので取り合えずできるとこまで続けましょうと説明しました。



ここであきらめてしまうと、「不登校のループ」からは抜け出せません。
不登校から「引きこもり」となってしまうのが目に見えてます。
ここでかなりのエネルギーを使って、食い止めないと蟻地獄のように抜け出せなくなってしまいます。



お子さんとも、「まずは継続してみよう」と約束して外来を終えました。
ずっとゲームをだらだらしてしまっているようで、それはよくないので、ゲームするなら「塾に行く」という約束も提案しました。
基本的には、「〇〇あげるから勉強しなさい」はダメなのですが、このケースは完全にゲームを取り上げると改善はせずにより反抗的になってしまう懸念があったため上記のように提案しました。



「飴と鞭」はあまりよい方法とはいえませんが、折り合いをつけて前に進ませるということも大事です。
まとめ
今回は、不登校になってしまったよくあるケースを解説しました。



「勉強についていけない」は親自身も認めたくないし、お子さん自身も告白したくないという感情が働き、うやむやになって対応が遅くなってしまいます。
学校のスクールカウンセラーなどを利用しても改善しない場合は、精神科医、特に児童精神科医などを頼ってみるのもよいと思います。



必ずしも改善するとは保証できませんが、原因を明らかにし新たな対処法を提案できることもあります。
ただただ、学校に行きなさい、勉強しなさいなどと言っても全く改善しないので注意が必要です。
可能な限り早急に、原因と解決策を試してみましょう。



不登校から引きこもりとなり、改善せずにいると「5080問題」に発展します。
「5080問題」とは、引きこもりの子どもが50歳、親御さんが80歳になってしまい、親御さんが面倒を見切れなくなってしまう問題のことを指します。
外来でこのよな問題を抱えて、どうしたらよいか?と相談に来られるのですが、5080になってしまうと、正直なところ解決の方法がほぼありません。



まだ、10代だからとおもって様子を見てしまうと、いつのまにか20代、30代…あっという間に5080問題が訪れます。
若いうちに介入するほうが、時間と労力が少なくて済みます。
それでも、大きな労力と時間がかかってしまうのですが、早いうちのほうが取り返しがつきやすいです。



もし周りで悩んでいる親御さんがおられたら、病院、精神科の早めの受診をお勧めしてあげてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでも何かの参考になれば幸いです。
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