【精神科医が解説】中学受験に必要な精神的なサポート

今回は、中学受験生を支えるために必要な精神的なサポート方法を精神科医として解説いたします。

中学受験に限らず、受験は合格に至るまで精神力が問われます。そして精神面をサポートする親の努力も必要です。  

中学受験にはさまざまなサポートが必要です。

当たり前ですが、まだ小学生なので中学受験に限らず、いろんなことでサポートが必要です。

スポーツを習っていても、スポーツ用品の準備、土日になると試合の送り迎えや応援、プロとかを目指すならば動画を撮影し振り返り、対戦相手の分析、自主練など挙げるとまだまだありそうです。

中学受験も同じですね。塾の準備や宿題、各種講習や志望校が開催するイベントの把握、送り迎え、受験校の分析や過去問の特訓、自主学習など、こちらも挙げるとキリがないほどです。

日々のところでは、いつまでにどこまでしなくてはいけないのかなど宿題や勉強のスケジューリング、プリントやテキストの整理も親側がやらないといけません。

そして、

何より大事なのは精神的なサポート

です。

定期テスト、実力テスト、志望校別テスト、テストごとに順位や偏差値で評価され、クラス替えもストレスとなるでしょう。

一喜一憂しながら合格に向けて頑張る我が子にできる限り精神的なサポートをしていきたいと親御さんは皆さん思っています。

では、どのように精神的なサポートをすればいいか解説していきましょう。

子供は「やらされている」と思っている

前提として確認しないといけないことがあります。

それは、

中学受験は１００％子供が望んでしているわけではない

ということです。

ときどき、「うちの子は自ら中学受験をしたいって言いだしたんです」という親御さんもいます。

確かに最終的にお子さんが塾に行きたいと言ったかもしれませんが、どこかで知らず知らずに中学受験したいと言うように誘導している可能性があります。というか、しています。

「〇〇君は、中学受験するみたいね。偉いね。」

とか

「〇〇ちゃんは、塾にいってるみたいね。将来、偉くなりそうね。」

とか。

親御さん自身は何気ない発言かもしれませんが、お子さんにとっては自分と比較されているみたいに感じ、自分も親に「偉いね」と言われたいがあまり、「〇〇君と同じように中学受験をしたい」というようになります。

その前提があれば、見返りを求めない献身的なサポートが可能となるんです。

子供の立場からすれば、「これだけしてあげてるのに、お前は全然勉強しないし成績も上がらない」と言われても、そもそもがしてほしいと頼んだわけではないのです。

そうすると、一喜一憂しながら、時には「やめたい」と泣き叫んだり、「宿題なんかやりたくない」とテキストを投げるようなことがあっても、親のためにここまで必死にやってくれていると思うと全力でサポートする気持ちになれます。

✅ 子供はやらされていると思っている。
✅ 親のためにここまで必死にやってくれていると思って献身的にサポートする。

サポートに見返りを求めない

ポイントなのは、

「ここまでやってあげているのに、なんで勉強しないの！」

と怒らないことです。

「わたしは、毎日自分を犠牲にして、弁当を作ったり、資料を整理したり、宿題の準備もこんなにしてあげてるのに、この子は答えてくれないどころか反発してくる」

という悩みはどこのご家庭でもある悩みですよね。

しかし、怒ってばかりいても、自分自身だけでなくお子さんの精神衛生面でも全くよくありません。

まずは怒りのコントロールが必要です。

怒りのコントロールの仕方については、過去記事を参考ください

そして、サポートの見返りを求めてはいけません。

子供に関しては、親御さんは完全に「Giver(ギバー：与える人)」で居続ける必要があります。

アイドルとかの追っかけの人たちは基本的に「推し」に対しては、見返りを求めてないと思います。

それと同じで、我が子を「推し」とすることで、「見返りを求めず推し続ける」精神でサポートし続けましょう。

✅ サポートに見返りを求めない。
✅ 子供は「推し」として見返りを求めずサポートすべし。

上記のような前提を理解した上で、状況に応じてどのようにサポートしていけばよいか見ていきましょう。

うまくいっているとき

テストの点数が自己ベストだったとき
志望校の判定がＡ判定であったとき
クラスが上がったとき

高学年になると照れがちですが、ほめたり、喜んでいる親の様子をみて悪い気はしません。

また、頑張ろうという気持ちになってくれます。

注意点は、「勝って兜の緒を締めよ」という言葉通りに、クールにふるまうのはよくないです。

うまくいっているのに、緩みがちな緊張を引き締めるため厳しくふるまうと、子供は「ここまで頑張ってもほめてくれないの？」と混乱し目標を失ってしまうことになりかねません。

小学生は高学年と言ってもほめてもらって恥ずかしいと思いながらも、またほめてもらいたいから頑張ろうとおもっています。

もちろん、気が緩みすぎて成績が落ちてしまうと元も子もないので、そのような兆候が見られたときにサポートする発言をしたらいいと思います。

「この前はすごく良かったけど、ちょっと気が緩んじゃうと悪くなっちゃうよ。今日はここからここまでやっておこう。」

と具体的なアドバイス、サポートがよいでしょう。

「とにかく頑張れ」
「とにかく勉強しろ」
「とにかくいい点数をとれ」

という抽象的なサポートやアドバイスは効果的ではありません。

具体的に、

「ここからここまで宿題しよう。ここができたら完璧に近づくよ。」
「この分野が苦手だから今日はここを復習しよう。そうすればまた点数が上がるよ。」
「今日はここの中学の過去問をやってみよう。これができたら合格近づくね。」

などと、サポートやアドバイスするのがよいでしょう。

小学生ですから、スケジュール管理はもちろんできないですし、放っておくと好きなことばかりするので苦手分野が放置となりかねません。

また、小学生は、特に男の子は、「完璧」とか「すごい」とか「超」とかが好きです。

ですから、「完璧に近づく」とか「すごいパワーアップする」とか声掛けするのもよいでしょう。

✅ うまくいっているときは単純に喜んで、褒めてあげましょう。
✅ 気が緩みそうになったら、具体的なアドバイスを。

うまくいっていないとき

うまくいっているときと比べたら、当然のことながら、精神的なサポートは難しいです。

なぜなら、親自身も不安定になっているからです。

尽くしても尽くしても、お子さんの成績が上がらない。

それだけでなく、いくら優しく声掛けしても勉強もしようとしなければ、なおさらに苛立ちが募ります。

スポーツでもとにかく走れ、仕事でもとにかく営業してこい、とか具体的ではない指導は無意味どころか、反感も買いかねず、ますますうまくいきません。

私の場合、長男のテスト結果はほとんど目を通しています。

じっくりは見ていませんが、間違ったところを把握して、いつもどんなところを間違っているか分析します。

例えば、国語のテストでいうと、後半部分の失点が多かったり、空白が多かったりします。

毎回その傾向が続けば、

「文章の読解スピードが遅い」ということがわかります。

そして、テストをもう一度解きなおしたときに、問題なく解けたとします。

つまり、「時間がなかった＝文章を読む速さが足りない」ということがわかります。

そうすると、どのようなアドバイスをしたらよいか明確です。

「いつも後半で失点しているね。落ち着いて考えたら簡単よな。ということは、どうしたらいいかわかる？」

とある程度質問で誘導して、子供自身がどうすべきか考えて答えさせます。

「なるべく早く読む練習しなきゃいけない。」

という答えはでてきますので、その後はその練習をしていくことになります。

うまくいかないとき：親自身がうまくいかない原因を分析し、解決法を一緒に考える

うまくいかないときには必ず原因があるはずです。

それを冷静に分析できるのは、親しかいません。

衝突していては無駄な精神的に負担が増大します。

なぜうまくいかないのか必死に考えてもわからなければ、第三者、つまりは塾の講師に質問しましょう。

ただ、親が分析してお子さんと一緒に解決法を考えるのがベストです。

お子さんは、一緒に考えて解決法を見出してくれればますます親を信頼するからです。

それでもうまくいかないとき

立ち位置、理想と現実の理解、それらをもう一度見つめなおし、塾側と相談し目標レベルの調整もしていきましょう。

「あそこのお子さんは、トップの○○中学を目指しているらしい」
「○○さんちの●●ちゃんは、また算数も国語もいい点だったみたい」
とお子さんよりも親の競争心を煽られるようなことがたくさんあると思います。
しかし、親の見栄のために、お子さんを無理なレベルの目標に巻き込むのは賢明ではありません。

医学部の友人の中には、中学受験に失敗したけどその後リベンジを果たし、国立医学部に入学したものも少なくはありません。

人間っていつがピークかわからないのです。

もちろん、上を目指す精神は常に心がけていたいですが、精神的に追い込んで、受験本番前に精神を病んだら元も子もありません。

適度なストレス状態を保ちながら、時に息抜きし、的確なアドバイスをしながらサポートがよいでしょう。

どのレベルを目指したらいいのか訳が分からなくなったら、塾の講師にアドバイスを求めるのがよいでしょう。客観的な意見をもらえるはずです。

さまざまな改善方法を試してもうまくいかないときは、客観的に理想と現実を見直そう。

子供がうまくいっていないときに親自身が不安定にならない秘訣

悪いときにどういうふるまいをすべきか事前にイメトレしておくことが大事です。

医師は、特に手術などの場合、悪いことが起こった時にどのように対応すべきかあらかじめ頭に入れておいて手術に臨みます。

特に大事な手術の前には、さまざまなことを頭の中でシミュレーションします。時に、手術スタッフ全員で術前カンファレンスで想定されるよくないことを確認し、それが起こった場合どうすべきかを検討します。

重症患者さんの手術の前には、手術室でシミュレーションをしたことさえあります。

そして、プランＡでうまくいかなかったらプランＢで、さらにはＣという風に何個かプランも用意します。

受験も一緒ですね。

お子さんがうまくいかないとき、テストで点数が悪かったときを想定しておいて、なるべく冷静にお子さんをサポートするように準備をするのです。

✅ 簡単な計算ミスによる失点
✅ 問題の読み間違いによる失点
✅ 何度もやったことがある問題の失点
✅ 得意分野の失点
✅ 体調が悪く失点
などなどいろいろ複合的に組み合わさってすごく悪い点数になることもあり得ます。

悪いと想定していたほうが、精神的にも楽かもしれません。

そして、まだ練習段階でよかったのです。

次に向けて、適切な具体的なアドバイスをしていくしか親御さんには方法がありません。

うまくいかない時には子供と同じように不安にならずに、あらかじめいろいろ想定して、適切、かつ具体的なアドバイスを心がけましょう。

まとめ

時に親御さん自身も我慢できずに張り詰めてた糸がきれて嫌になるときもくるでしょう。

時にお子さんと衝突する時もくるでしょう。

受験までの道のりは長いようであっという間です。

気づいたらあと○ヶ月と言う感じで過ぎ去っていきます。

そして、お子さんと一緒に何かをやり遂げる機会はどんどん少なくなっていきます。

そう思うと、一瞬一瞬が大事に思えてきます。

あくまでも、精神科医で2023年中学受験組の父親の一意見ですが、何かの参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。